日時:2026/10/11 13:30~15:00
場所:金沢市鳴和台市民体育館 第1会議室
テーマ:「きょうだいの気持ちを考える会」
第1部:特別講演 「障害のある兄弟姉妹をもつ人の感情の変容とその背景に関して」
講師:金沢星稜大学 人間科学部 スポーツ学科 柳川公三子
第2部:トークセッション「障がいのある兄弟姉妹をもつ方々が思うこと」
司会︓金沢星稜大学 人間科学部 スポーツ学科 奥田鉄人・柳川公三子
登壇者︓左田帆乃香さん 麻生舞さん
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第1部
概要
金沢星稜大学の柳川公三子先生に、「きょうだいの気持ちを考える」というテーマで、障害のあるきょうだいを持つ人々の感情の変容とその背景について講演しました。
- 井尻さんの研究は、障害のあるきょうだいを持つ18歳以上の11人に対し、半構造化インタビューを実施しました。
- インタビュー結果から、親の公平な関わりやきょうだいの自主性尊重が心理的負担軽減に影響することが示唆されました。
- 社会の偏見や好奇な視線が否定的な感情を生むため、社会モデルの浸透が心理的負担軽減に重要です。
- 柳川先生は、無意識の固定観念を変え、社会モデルを理解することで共生社会を目指すことの重要性を強調しました。
ディテール
本日の会は、ダウン症のお子さんを持つご家族が、きょうだいとの接し方に悩む中で企画され、きょうだい児の感情とその背景、そして社会モデルの重要性について理解を深めることを目的としています。金沢星稜大学の柳川公三子先生が、知的障害のある兄を持つ井尻さんの卒業研究を基に講演し、きょうだい児が抱える葛藤や心理的負担、そして社会モデルの考え方がその軽減にどう貢献するかを考察しました。
特別講演:障害のある兄弟を持つ人々の誕生の変容とその背景
- 講演者とテーマ:
- 金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科の柳川公三子先生が特別講演を行いました。
- 講演テーマは「障害のある兄弟を持つ人々の誕生の変容とその背景」でした。
- 講演内容は、柳川先生のゼミ生である井尻さんの卒業研究に基づいています。
- 井尻さんの背景と研究動機:
- 井尻さんには知的障害のある兄がおり、特別支援学校の教員を志望していました。
- 幼少期は兄を隠したいと思っていませんでしたが、中学生の頃から周囲に知られたくないと感じるようになりました。
- 兄を隠したいと思う自分に罪悪感を感じ、葛藤を抱えていたと語られています。
- 障害のある兄弟を持つ友人が、弟の障害を隠さないことに疑問を抱き、研究のきっかけとなりました。
- 大学で社会モデルの概念を学び、障害に対する見方や考え方が大きく変化しました。
- 社会モデルの概念:
- 社会モデルは、障害を個人の問題ではなく、社会側のバリアによって生じるものと捉える考え方です。
- エレベーターの有無のような物理的な障壁だけでなく、制度的、慣習的、観念的な障壁も含まれます。
- 柳川先生は、物理的・制度的なバリアフリー化は進んでいるが、観念のバリアフリー化が最も難しいと述べました。
- 無意識の固定観念が、視覚障害者用点字ブロック上の自転車駐輪のような問題を引き起こすと説明されました。
- 社会モデルの浸透により、障害のある人やそのきょうだいが困ったり嫌な思いをしたりすることがなくなると期待されています。
- 井尻さんの卒業研究の目的と方法:
- 井尻さんは、障害のあるきょうだいを持つ人々の感情やその背景を明らかにすることで、今後のきょうだい児支援の示唆を得ることを目的としました。
- 否定的な感情を持つ人だけでなく、持たない人にもインタビューを行い、新たな知見を得ようとしました。
- 18歳以上の障害のあるきょうだいを持つ11人に半構造化インタビューを実施しました。
- インタビューは「幼少期から思春期の障害理解と感情」「現在の感情とその背景」「親との関係、家庭環境」「社会モデルについて」の5つの柱、23個の質問で行われました。
- インタビュー結果と考察:
- 抽出されたカテゴリー: 幼少期から思春期に確立された感情、きょうだいの障害の開示と周囲の反応、相談相手や支援、親との関係性や家庭環境、家庭内での役割、現在の感情、障害のあるきょうだいからの学び、将来の不安。
- 先行研究と共通する結果: 親の注意が障害のあるきょうだいに向きがちで、きょうだい自身の孤独感や強迫感につながること、ケアを任され自由な時間が制限されること、障害のあるきょうだいとの関わりが特異的に見られ隠すようになることなどが挙げられました。
- 井尻さんの研究ならではの結果と考察:
- 相談のしにくさ: 障害のあるきょうだいを持つ人は、親を悲しませたくないという思いから悩みを抱え込む傾向があることが示唆されました。
- 相談のしやすさ: 理解のある相談相手や専門知識を持つ支援者の存在が、相談しやすさにつながることが分かりました。
- 親の姿勢の影響: 親のポジティブな考え方やきょうだいの自主性を尊重する姿勢が、きょうだいの肯定的な感情や葛藤の減少につながることが明らかになりました。
- 社会のバリアによる否定的な感情: ショッピングモールでの姉の行動や弟の発する奇声に対する周囲の視線が、きょうだいの否定的な感情を生むことが示されました。
- 井尻さんの卒業研究のまとめ:
- きょうだいの心理的負担を軽減するためには、家庭内での心理的負担がきょうだいに偏らないようにすること、親の公平な関わり、きょうだいの自主性の尊重、親のポジティブな思考が重要です。
- 家庭内の支援に加え、社会全体で障害理解を深め、開示や相談のしやすい環境を整えることも重要です。
- これらの核となるのが社会モデルの考え方であり、社会モデルを広く浸透させることで、きょうだいの心理的負担が軽減されると期待されます。
- 柳川先生の私見と提言:
- 社会モデルを浸透させる上で、私たちの中にある無意識の固定観念を変えることが重要だと述べられました。
- 「普通はこうだよね」という固定観念が、偏った見方や考え方を生み、他者を否定することにつながる危険性があると指摘しました。
- 自身の無意識の固定観念を自覚し、他者の見方を尊重することが大切だと強調しました。
- 正規分布図を例に、多数派を基準とした社会の仕組みが少数派にとって不利益をもたらすことを説明しました。
- 差別や不平等をなくし、多様性が尊重される共生社会を目指すためには、社会の仕組みや制度の見直しが必要であり、社会モデルの考え方を理解することが重要だと述べました。
- 親御さんにとっても社会モデルが浸透すれば、「普通に近づけなくては」という考えではなく、その子のあり方を尊重しやすくなると提言しました。
- エピソード紹介:
- 柳川先生が特別支援学校勤務時のエピソードとして、知的障害と自閉スペクトラム症を持つOさんとその姉の話を紹介しました。
- 運動会練習中にOさんが見通しが崩れて排泄してしまった際、姉が「Oが悪いんじゃなくて、中学校の先生が悪い」と発言したことを紹介しました。
- このエピソードから、中学2年生でそのような考え方ができる姉の素晴らしさと、家族のポジティブな考え方を強く感じたと述べました。
- 障害を悲観的に捉えるのではなく、「こういう特性があるけど、こうすれば大丈夫」という考え方で生きられる社会になることを願っていると締めくくりました。
第2部
ダウン症の子どもを育てる親が、その子の兄弟姉妹がどのように感じながら育っていくのか、また大人になった時にどのような関係になるのかという懸念を持っている。
障害のある兄弟と一緒に育ってきた方2名に、子供の頃から今までどんなことを感じていたのかを率直に聞き、良かったことだけでなく、嫌だったことや寂しかったことも含めて話していただく。
インタビュー対象者
左田帆乃香さん:中学校の教員。5歳下の弟が知的障害を持っている。
麻生舞さん:大学四年生。2歳上の姉がダウン症を持っている。

障害ということを横に置いて、お二人の兄弟がどんな人であったか教えてください。

弟は優しい。頭が痛いと言うと「大丈夫どうしたの」と心配してくれる。

姉は今まで接してきた人の中で一番優しい。何を頼んでも文句言わずしてくれる。メイクやファッションを褒めてくれる。何か買ったりイメチェンした時に一番反応が良い。

子供の頃、実際にお二人でどのようなことをして遊びましたか?

姉だったので、面倒を見ることが多く、一緒にかくれんぼをするのが一番多い遊びだった。鬼ごっこもした。好きなことは繰り返し「もう1回、もう1回」となるので、それをひたすらやっていた。

小さい時はアクティブで外で遊ぶのが大好きだったが、姉はインドア派だったので、別の友達と外で遊んでいて、姉は家で静かにいることが多かった。あまり一緒に遊んだ記憶はない。

同じ普通の兄弟と同じように、喧嘩したり腹が立ったりすることはありましたか?

腹が立つことはあったが、一晩寝たら忘れる。喧嘩はした覚えがない。自分が思っている当たり前のことができない時に「え、なんでこんなこともできんの」と思って「はぁ」となることはあった。

喧嘩したり腹が立ったりすることはあったが、すぐに忘れてしまう。食事になったらケロッとして普通に戻っている。

自分のきょうだいが、他の家のきょうだいとどう違うのかと感じたのはいつ頃ですか?

弟が歩くのが遅かったり、言葉がなかなか出てこなかったりして、母が悩んでいる様子があったので、そこで発達が遅いと感じた。自分が年長さんの頃

小学校の時に姉が特別支援学級に入っていたので、みんなが行かないところに姉が通っていることで、何か違うと感じた。

小学生くらいの時に、兄弟のことを友達に普通に話したりしていましたか?

普通に話していた。自分が六年生の時に弟が一年生として入ってくることを友達に伝えていた。弟が支援学級に入ってくることも分かっていた。当時、偏見があった時期だったので、もし弟に何か言ってくる子がいたら絶対に言い返す、守ると決めていた。

姉がすでに学校に入っていて有名人だったので、私が言わなくても友達は「葉乃の妹ね」という感じで知っていた。

友達の反応で、嬉しかったこと、逆に嫌だったことはありますか?

嫌なことを言われたことはない。周りも自分が普通に話すから、それが普通だと思って聞いてくれていたので、嬉しかったことも嫌だったこともない。

嫌なことも嬉しいこともなく、普通に生活できていた。当たり前に接してくれるのが嬉しいということもない。

ご両親の接し方で、それはすごく良かったなということがあれば教えてください。

障害を持つ弟に手がかかるという話があるが、自分は逆で、小学校二年生から硬式テニスをずっとやっていて、送り迎えをしてもらえた。弟もついてくる形だった。小学校ではテニス中心で、母が帰宅後にご飯を作ってもらい出発し、帰宅後も自分の話を聞いてもらえた。中学では陸上部で、部活の途中で抜けて迎えに来てもらい、テニスに行って練習し、帰宅後にご飯を作ってもらえた。高校生の時は部活動後に塾に連れて行ってもらえた。自分中心に生きてきたし、話も常に聞いてもらっていた。

両親は特別扱いをしていた記憶はあまりない。祖父はダウン症は人とは違うから理解してあげなければならないと言っていたが、両親はできることをやらせようとし、姉の良いところを見て、可能性を摘むのではなく、やってみようという姿勢だった。やりたいことを自由にさせてくれたので、自分がケアをした記憶はあまりない。

自分にもっと自分を見てほしかったとか、こうしてほしかったということがあれば教えてください。

常に見てもらっていたし、平等に見てもらっていた。弟を見ることも当たり前だと思っていたし、自由が制限されると思ったこともない。一緒に遊んでいて楽しいのは当たり前で、障害があるかないかに関わらず、どの兄弟でも同じだと思うので、特にない。

ない。自分はわがままで、わがままばかり聞いてもらっていた。姉にもわがままを聞いてもらっていたので、全くない。

嫌なことや困ったことがあった時に、お父さんお母さんには素直に全部話せましたか?

なことや困ったこともなかったので、相談することはなかった。しかし、仮にあったとしても言える環境だったと思う。

小学校、中学校では偏見を持った周りの子が多かった。姉の周りの人たちが姉を馬鹿にしたり、悪口を言ったりするのを聞いていた。姉も悲しんでいるのをたくさん見てきた。それはちゃんと相談できる環境だったし、特別支援学級の先生や姉の周りの先生も姉のことを分かってくれていたので、相談できた。家族の感覚的には相談しやすかった。

中学校、高校、そして今、大学生、社会人という成長の過程で、兄弟への気持ちは何か変わったことはありますか?

ない。ずっと一緒で、ずっと大好きだし、一番大切な存在。

中学、高校の部分は学生生活もあったが、今仕事をして5年くらい続けていて、尊敬が大きくなった。毎日楽しそうに仕事に行く姿を見て、すごいなと思う。

兄弟がいたことで、自分にとってプラスになったことは何かありますか?

大学で教員になりたかったので、星稜大学のスポーツ学科で中高の保健体育の免許と特別支援学校の免許が取れることを知り、弟のために何か勉強できればと思い、特別支援学校の免許も取得した。大学4年の時に教員採用試験を受けた後、特別支援学校の教育実習が楽しく、体育の倍率が高かったこともあり、来年からは特別支援学校で受けようと思っていた。結果的に体育で受かったが、支援学校でも働きたいと思っている。弟が働いているAとBと生活介護の間の事業所が少なく、支援学校に行って進路などに携わりたい。将来的にショートステイなども併設された施設ができたらいいなという夢を持っている。教育現場で働く上で、特別支援教育は教育の根本にあると感じており、その学びはどの子にも使える。障害の有無に関わらず、困っている子に知識を使ったり、偏見なく平等に見ることができるのは弟がいたからこそ。

障害の子たちに対して偏見を持たないようになった。自分の身近にいるからこそ、当たり前の存在であり、障害だからという考え方がない。様々な人の目線を感じやすく、姉に対する嫌な目も見てきたので、そういう目で見ないようになった。誰に対してもできないことから見るのではなく、できることに目を向けようという考えを持つようになった。

今後、大きくなっていくにつれて、兄弟の関係について何か不安なことはありますか?

ない。親の方が先に亡くなるので、その後の面倒は自分が見るものだと思っているし、覚悟を持って生きている。今不安に思っても仕方がない。それよりも、今担任している中学三年生の子たちの進路実現の方が不安が大きい(笑)。

事前にこの質問をもらって初めて考えたが、親や祖母がいてこそなので、もしそういう人がいなくなったらと考えると不安は大きい。姉妹は3人いるが、姉のことを一番理解しているのは家族だと思っているので、親がいなくなったら姉はどこに頼るのか、また姉から頼られた時に全部受け入れてあげられるのかという不安がある。自分にもやりたいことがあるので、ずっと姉にかまってあげられるわけではないが、近くにはいてあげたい。

そのことについて、両親と何か相談したことはありますか?

自分がそういう施設を作れば、弟がそこにおればいいし、送迎バスも手配できる。施設長のような立場になれば、家族が困っていることや支援が必要なところに寄り添えるものにできるのではないかと思っている。弟も送迎がないと無理なので、自分がそういう場所を作れば、そこで働いてくれる人も自分で選べるので、安心して任せられる人に頼める。

そんな話はあまりしたことがない。今のことだけで精一杯。

今、子育てをしているお父さん、お母さん方に対して何かメッセージがあればお願いします。

障害について自分自身が理解しておくことが大切。暴れたり変な行動があっても、それが特性だと思えば「だから何?」となる。勉強することで受け入れるキャパも大きくなる。検査を受けてみて、そういう特性があるんだと分かれば、対処法も分かる。理解することで、障害を持つ人も生活しやすくなる。弟はIQが低く、自分が障害を持っているかは分かっていないと思うが、友達は自分が特性があると分かるだけで生活しやすくなったと言っていたので、理解することは一つ大切なこと。

姉が生まれてから、母や祖母がすごくショックを受けたという話を何回も聞いたことがある。初めて生まれた子どもがダウン症だと、不安に感じると思う。しかし、ずっと一緒に生活してきて、姉は本当に普通。IQが低いというか、中身は小学生のようだが、思っているよりも何でもできる。障害を持っているから何かしてあげなければならないとか、他の子とは違うから心配が多いかもしれないが、思っているよりもできるし、自分の意思も持っている。自分のやりたいことも選べるので、もっと本人に任せてあげてもいいのではないかと思う。育てる側がいっぱい考えるよりも、本人に委ねる方が生きやすい。

障害のある兄弟姉妹との生活を通じて、彼らを当たり前の存在として受け入れ、その経験が自身の成長や将来の夢に繋がったと語った。両親の接し方や、障害に対する理解と尊重の重要性が強調されたと思う。
